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走り幅跳び

(1)走り幅跳びとは

 走り幅跳びは、助走のスピードを最大限に生かしてできるだけ遠くへ跳ぶことを競う競技です。人間は昔から動物を追いかけたり、あるい自分を襲う敵から逃れるときに、小川やみぞを跳び越えていましたし、古代ギリシャのオリンピックでも、今の走り幅跳びとは少し違いますが、両手におもりを持った走り幅跳びが行われていたように、大変歴史の古い競技です。

 走り幅跳びで記録を伸ばすには、助走のスピードとそのスピードを効果的に生かすことのできる力強い踏切が必要です。空中のフォームとしては、日本の南部忠平選手によって完成されたといわれている空中で大きく身体をそらせる「そり跳び」と、空中を走るように脚をふり動かす「はさみ跳び」の二つが代表的なフォームとして行われています。しかし、走り幅跳びの空中フォームは、走り高跳びと異なり、空中でバランスを保ち効果的に砂場に着陸するためのものです。

 走り幅跳びでも、近代オリンピックが始まった1896年以来数多くの名選手が生まれていますが、今から約75年も前の1935年に8m13の大記録をつくったアメリカのオーエンスは、大変優れた短距離ランナーであり、そのすばらしいスピードによって生まれたこの記録は、25年後に名手ボストン(アメリカ)に破られるまで世界記録として輝いていましたし、日本でも1931年に7m98という当時の世界記録を樹立した南部忠平選手の記録が、1970年に山田宏臣選手の8m01に破られるまで実に39年間も日本記録として、数多くの選手の挑戦をしりぞけていました。

 1960年以後は、ボストンとテル・オバネシャン(ソ連)の争いによってふたたび世界記録が書き変えられました。ふたりとも体格に恵まれており、流れるような助走から生まれるスピードを豊かなバネと結合させ、空中を三歩半も走るといわれる華麗なはさみ跳びを駆使してともに8m35の記録を樹立し、しばらくはこのふたりの争いが続くものと考えられていました。

 ところが1968年のメキシコオリンピックで信じられないような出来事が起こりました。決勝の一回目、ボストンを師と仰ぐ若干22歳のアメリカのビーモンが、適当な追い風を背に受け長身を折り曲げるようにし助走を開始しました。ぐんぐんスピードに乗った彼は、白い踏切板を鋭くけって空中に跳び上がりました。それは他のだれよりも高く上がり、そして長い時間のかかった跳躍のように観客には思われました。

 審判員が計測器を使って距離をはかろうとしましたが、あきらめて巻尺を持ち出しました。観客はかたずをのんで見守っています。やがて掲示板に8m90という、信じられないような記録が表示されました。観客席はどよめき、等のビーモンは跳び上がって喜んだあと、地にひざまついて神にその幸運を感謝する祈りを捧げはじめました。やがて、ほんの今し方まで世界記録保持者であったボストンが、静かに彼に歩みより抱き起こして祝福します。今までの記録を55cmも上まわる、21世紀の記録ともいえる大記録の誕生は、実にドラマチックでした。

(2)走り幅跳びの技術

助走

 走り高跳びと同じく、助走・踏切り準備・踏切り・空中動作・着地について説明することにします。

 助走の重要さについては、走り高跳びのところで説明しました。走り幅跳びのように距離を跳ぶことを競う競技では、より水平のスピード(助走のスピード)が必要であり、スピードの向上が最大の課題であることを理解するべきです。

a.助走の長さと決め方
 助走の長さは、経験年数(年齢)、性別それに加速のじょうずへた、脚力などによって異なりますが、男子なら30mから45mぐらい、女子や初心者ならば25mから35mぐらいが適当です。
 
 助走の長さを決めるには、助走の走り出し方や走り方をよく理解したうえで、走路を使って何回も助走の練習し、一定したところで適当な距離を走り幅跳びの助走路に移します。そのときに、踏切板から6歩、または8歩のところにマークを一か所置くようにします。このマークは、足を合わせるものではなく、踏切りへ移るための準備やリズムの取り方のために用いるものと、考えたほがよいとおもいます。
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b.助走の走り方
 助走の走り方は、両脚をスタートマークにそろえ、前傾して走り出す方法や、踏み出す脚を一歩うしろに引いておき、はずみをつけて走り出す方法などいろいろな方法がありますが、大事なことは上体を前傾させ精神の集中したところで勢いよく、スタンディング・スタートの要領で走り出すことです。そして助走前半の加速の段階でもよくひざをあげて、なるべく早くトップ・スピードに乗るようにします。トップ・スピードに乗ったら身体を垂直に起こし、ひざを前上に引き上げ、そして引き上げられてひざから下の部分を勢いよくふり出すような走り方を心がけます。

踏切り準備

 踏切一歩前では、着地した脚のひざを軽く曲げ腰をわずかに沈めるようにして、スムーズに踏切りにはいれるようにします。この動作は踏切り準備として大事な動作ですが、助走のスピードを大きく失うようではいけません。この腰の沈めが無意識のうちに行えるように練習することが必要です。

踏切り

 腰をわずかに沈めた一歩前の姿勢から、踏切り脚のひざから下をふり出すようにしながら、足裏全体で踏切板をすばやく力強く、突っぱりたたくような感じで踏切りにはいります。このときに、腰もおくれないように前に出します。すばやく踏込むために、最後の一歩は、歩幅が少しせまくなるのがふつうですが、スピードのある選手は同じくらいでもよい記録が出ます。ただ広くなると腰が残り、助走のスピードも失われるし力強い踏切りができないので気をつけます。踏切板に鋭く踏込んだときには身体は起こされ、ひざがのびて突っぱった状態になっていますが、身体が前に押し出されるにつれて助走スピードと自分の体重に、より大きな力がかかって踏切り脚のひざがやや曲がります。身体の重心が踏切り脚を通り過ぎる瞬間、反対脚をひざから曲げてすばやく前上方にふり出すとともに、肩や腕などをランニングのときよりも大きな動きで引き上げるようにしながら、腰・ひざ・足首を鋭く押しのばし空中に跳び出します。

 走り幅跳びの踏切りを言葉で表すと以上のようになりますが、このすべてがわずか0.1秒あまりのあいだに行われなければなりません。

空間動作と着地

a,そり跳び
 踏切りで空中に跳び上がったら、前上方へふり出した脚を下方でふりおろし踏切り脚とそろえるようにしながら胸を大きく張り、弓なりにそらします。ここで大事なことは、しっかりと踏切ってからこの動作をおこなうことと、上体を前へかぶせすぎないことです。この姿勢からタイミングよく両足のひざを抱え込むように前方へふりだします。
b,はさみ跳び
 ひざを曲げて前上方へふり出した脚は、腰をのばして空中にのび上がるような感じでひざから下をふりおろすとともに、踏切り脚のひざを曲げながら前方に引き出し踏みかえるようにします。下えふりおろした脚は、ひざを曲げたまま前に出して踏切り脚にそろえ、両ひざをのばしながら着地に移ります。このときに、両腕も両脚の動きに合わせてリバースが行われます。一流選手の中には、この動きをもう一回くりかえす人もいます。

(3)走り幅跳びの練習方法

 トレーニングに対する一般的な考え方については、走り高跳びの練習方法のところで述べましたから、ここでは省略することにします。
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走り幅跳びに必要な体力とトレーニング 

 走り幅跳びに必要な体力については、基本的には走り高跳びと変わることはありません。走り幅跳びではスピードが速いために、踏切りのときに大きな力がかかることは、「走り幅跳びの技術 踏切り」のところで説明しました。したがって、筋力や瞬発力については走り高跳び以上に鍛錬することが必要ですし、スピードや敏捷性も必要ですからいろいろな補強運動を鍛錬期や試合期に計画的に取り入れます。

走り幅跳びの技術とトレーニング
 技術のためのトレーニングの要点は、走り高跳びと変わるとろはありません。もう一度走り高跳びのところを読みかえして、よく理解しておくことがたいせつです。
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a, 助走のための走る運動
 短距離のトレーニングを参考にして行いますが、練習の量などを加減することと、なるべく力まないような走り方を身につけるようにします。加速疾走系の走練習が特に大切です。
b,助走練習
 走り幅跳びの助走は、スピードが必要なうえに踏み切り板に正確に合わせるという難しさがあり、助走練習にはかなりの時間が必要です。
 自分に適した助走距離が決まったら、助走路でその練習をしますが、二つの方法があります。
 一つは、走り抜ける助走練習で、踏み切り板を意識しないで走り抜ける方法です。この方法は、初心者が助走を覚えたり、またかなりの選手でも、シーズン前の助走練習として取り入れたりしています。
 走り抜ける助走練習で、助走のリズムと正確さが身に付いたら、もう一つの方法である軽く踏切を入れた助走練習に移ります。
c,踏切の練習
 最初は軽く走りながら踏切り脚で踏み切る練習を、三歩または五歩の助走で連続して行います。次に、等間隔に並べたミニハードルなどを、一歩や三歩などのリズムで跳び超える練習をしたり、跳び箱を利用した短助走の跳躍をしたりして走り幅跳びの踏切の感覚を身につけるようにし、踏切り板を使った踏切り練習へ結びつけます。
d,空間動作の練習
 跳び箱の上で踏切り、空中での時間を長くして身につけるようにします。そり跳びは、踏切りで腰がしっかりと伸びれば簡単にできますが、はさみ跳びの場合は前上方へふり上げた脚をふりおろすための目標を適当なところにおいて行うようにします。

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